運送業で働いている人を中心に、起業して運送会社を設立したいと考えている人が見られます。
特に運送会社で長く働いている人は自分の運送会社を設立するのが一つの夢となっているようです。
そのように運送会社の設立を考えていても、実際にどのような手続きが運送会社が設立できるのかを理解できている人はあまり居ないはずです。
自分自身が働いていても気にしていない人が大半でしょう。
今回は運送会社を設立するにあたり知っておくべき基本知識を解説します。
運送会社を設立するために必要な許可
運送会社を起業して設立するためには許可が必要です。
実は運送会社は誰でも設立できるのではなく、届け出をして許可を得た場合にのみ設立できるのです。
まずはどのような許可が必要となるのかご説明します。
基本的には一般貨物自動車運送事業の許可を取得
基本的に運送会社を設立するためには、一般貨物自動車運送事業の許可を取得する必要があります。
営業用の緑ナンバーを取得するための手続きがこれに該当すると考えれば良いでしょう。
一般貨物自動車運送事業の許可を取得するためには国土交通大臣または地方運輸局長の許可を受ける必要があります。
具体的な許可の取得方法については後ほどご説明するため、ここでは許可の取得が必要であると理解しておきましょう。
なお、多くの場合で一般貨物自動車運送事業の許可を取得するためには長い期間を要します。
そのため、運送会社の設立には許可が必要になる点とその許可の取得には時間を要する点の両方を理解しておくべきです。
許可の取得には準備が求められる
許可は申請すれば取得できるものではありません。
適切な準備をしてやっと取得できるものです。
準備の観点には以下の2つがあります。
- 人やモノの準備
- 資金の準備
運送会社として一般貨物自動車運送事業の許可を取得するために必要な人やモノは法律で定められています。
そのため、それらの条件を満たすように準備をして運送会社を設立しなければなりません。
満たしていないと、起業しても運送会社としての事業ができなくなります。
また、運送会社を設立するために多くの資金が必要です。
これは上記の人やモノの準備にも大きく影響してくる部分です。
計画的に資金を準備して、万全の状態で運送会社を設立するようにします。
特に会社設立前に資金が必要となるため、自己資金をどれだけ準備できるかが大きな鍵を握ります。
一般貨物自動車運送事業の許可を取得する流れ
一般貨物自動車運送事業の許可を取得するためには多くのステップがあります。
具体的には以下のとおりです。
- 要件に沿った準備
- 必要書類の作成と申請
- 運輸局での受付と審査
- 役員法令試験の受験と合格
- 残高証明書の提出(2回目)
- 許可証の交付
- 登録免許税の支払いと必要書類の提出
- 事業用自動車等連絡書
- ナンバーの変更と運輸開始届の提出
それぞれについてご説明します。
要件に沿った準備
まずは運送会社を設立するにあたり、必要な要件を満たすような準備をしなければなりません。
一般貨物自動車運送事業の許可を取得するために必要な準備は以下の観点から進めます。
- 営業所
- 車両数
- 車庫
- 休憩・睡眠施設
それぞれに国土交通省によって細かく基準が設けられています。
どのような運送会社を設立するかによって適用される基準は異なるため、ここでは詳細のご説明は割愛します。
例えば車両も購入するのかリースするのかなどによって取り扱いが異なります。
準備をする際は国土交通省が公開している資料を細かく確認するようにしましょう。
必要書類の作成と申請
一般貨物自動車運送事業許可を取得するための書類を作成します。
様々な書類の提出が求められているため、抜け漏れがないように正しく作成しましょう。
ただ、申請書類を作成するとはいいますが、専門的な知識が必要となるものが多く素人には作成できないものが含まれています。
また、時間をかけて作成したとしても、内容に不備がありなかなか受理してもらえない可能性があります。
そのため、必要書類の作成については行政書士など専門の人に頼むことをおすすめします。
依頼するとそのぶんコストはかかってしまいますが、総合的に考えると自分で対応するよりもはるかにコストパフォーマンスが良いでしょう。
必要な書類の作成が完了すると書類の提出をしなければなりません。
添付書類などとともに管轄の運輸支局を通じて運輸局に申請します。
運輸局での受付と審査
運輸局で受付をしてもらい運送会社の設立に向けて審査が開始されます。
書類の不備などがあるとここで指摘されてしまいます。
特に不備がなくても審査には時間がかかり、3ヶ月から5ヶ月程度必要になるとされています。
どの程度の審査期間が必要になるかは状況によって左右されるため、運送会社の設立時期をいつにするかはよく考えておかなければなりません。
状況によっては設立の準備ができていても、運送会社として事業が開始できない可能性があります。
言い換えると、許可要件のために準備するもの以外は審査期間の間に準備可能です。
事前に準備しなければならないものと審査期間の間に準備するものを分けておくと、運送会社の設立に向けて時間を効率よく使えるでしょう。
役員法令試験の受験と合格
必要書類を受理してもらった後は、営業許可を取得するために法令試験を受験しなければなりません。法人登記されている常勤役員のうち、一人が合格しなければなりません。
試験はいつでも受験できるわけではなく、奇数月にのみ実施されています。
2ヶ月に1回のみの試験であるため、できるだけ一回で合格できるようにしなければなりません。
合格できないと次の試験まで2ヶ月ほど待たなければならなくなります。
なお、合格率については50%から80%程度とされています。
事前にしっかりと準備すれば、問題なく合格できる難易度でしょう。
残高証明書の提出(2回目)
初回の提出書類に残高証明が含まれていますが、それに加えて改めて自己資金の証明が必要です。
概ね申請書を提出してから3ヶ月程度で証明が求められると考えておきましょう。
こちらの作業は初回の提出時と比較して、自己資金が問題なく確保できているか確認するものです。
申請のために一時的に自己資金を増やしたのではなく、会社設立や許可を取得するために十分な資金があることを確認します。
なお、どの程度の資金があるのかの判断基準は、初回の申請時に提出した資金計画に基づきます。
資金計画の必要金額に自己資金が達していないと、申請しても許可が下りない可能性があります。
許可証の交付
自己資金の証明も含めて全て問題がなければ、無事に運送会社を設立するための許可がおります。
先ほども説明しましたが、申請をしてから3ヶ月から5ヶ月ほどは必要となるため、運送会社の設立では時間に余裕を持つようにしましょう。
許可が下りたならば運送会社を設立するための許可証が交付されます。
こちらの受け取りはしなければなりませんので、指定された方法で受け取りをするようにしましょう。
また、許可証が交付されるだけではなく、新規事業者向けの説明会が行われます。
運輸支局の担当者や日本年金機構、労基署の担当者などが運送会社設立に必要な知識を説明してくれるため、よく理解して帰らなければなりません。
なお、許可証を交付してもらってすぐに運送会社の設立ができるわけではありません。
他にも対応しなければならない事項は多数あるため、引き続き順番に対応するようにしていきましょう。
登録免許税の支払いと必要書類の提出
許可証が交付されると運輸局から登録免許税の納付書が送付されてきます。
登録免許税は必ず発生するため、12万円を納付するようにしましょう。
なお、支払いしたことを証明するために、支払証明書を送付しなければなりません。
また、運送会社のために法人登記を行う場合は、このタイミングで必要書類を作成するとよいでしょう。
運送会社を設立するための許可がおりているため、事業目的に運送会社に該当するものを記載して法人登記ができます。
その他にも運送会社を設立するにあたり多くの書類を提出しなければなりません。
例えば「運行管理者・整備管理者の選任届」「運輸開始前の報告」などを提出する必要があります。
それぞれの書類に添付しなければならない資料があるため、添付書類も含めて準備をして提出するようにしましょう。
事業用自動車等連絡書の発行
車検証事業用のものに変更してもらうため、事業用自動車等連絡書を発行してもらわなければなりません。
運営資格の担当者が発行してくれますので、運送会社として利用する車両の台数ぶんだけ手続きをしましょう。
連絡書を発行してもらうためには、事前に用紙を記入しておかなければなりません。
運営局の公式サイトにサンプルが公開されているため、そちらを参考に記入すると良いでしょう。
また、書式についても公開されているため、印刷して利用して差し支えありません。
ナンバーの変更と運輸開始届の提出
運送会社を設立するとなると、ナンバープレートが緑色に切り替わります。
車検証の修正をしてもらいナンバープレートを緑色に変更してもらいましょう。
新しくナンバープレートを取り付けてもらう場合は、運輸支局や登録事務所に持ち込みして取り替えをしてもらう必要があります。
問題なく緑ナンバーの取り付けが完了し、運送会社として事業が開始されたら運輸開始届の提出が必要です。
緑ナンバーに変更された車検証を添付して問題なく受理されれば手続きは終了です。
まとめ
運送会社を設立するまでの流れをご説明しました。
運送会社の設立で大きな鍵を握るのは、スムーズに一般貨物自動車運送事業許可を取得できるかどうかです。
これが取得できなければ、どんなに準備しても運送事業の設立はできません。
この一般貨物自動車運送事業許可はご説明したとおり取得までの道のりが長いものです。
そのため、運送会社を設立するために個人で申請するのはあまり現実的ではありません。
そこで、運送会社の設立に向けて許可の申請をしたいならば、行政書士法人経営サポートプラスアルファへご相談ください。
申請のプロが運送会社の設立を確実なものとするために申請をサポートします。